ソーテルネの格付けでプルミエ・クリュ・シュペリュールに格付けされているもので、貴腐ワインの中で世界最高峰のワインとされています。
ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイアズーと並び、世界三大貴腐ワインの産地の一つに数えられています。
中でもシャトーディケムが突出した実力を持っており、値段の高さや色味などから「純金のワイン」と呼ばれています。

貴腐は白ブドウの皮がボトリティス・シネレア菌に感染することで糖度が上がり、香りが高くなる現象で、通常であればブドウを腐らせてしまう貴腐菌ですが、この地方独特の、午前は朝靄、午後は晴れという条件の中だと貴腐菌がブドウの甘さを極限まで引き出します。
（このことからフランス語でプリテュール　ノブル＝高貴なる腐敗といわれています。）

この貴腐によって通常のワインよりも甘くなっていく仕組みですが、貴腐菌が皮の中にある蝋質が溶かされ水分が抜けていくことによって、甘味が凝縮されたブドウが収穫されます。
ちょうど干しブドウのようになったブドウは6～8週間掛けて手作業で収穫が行われ、その中からディケムにふさわしいとされたブドウだけが選別されていくのですが、甘さが凝縮されたブドウから作られたワインであるがために、他のワインでは考えられないような甘さや香りが作られていきます。

このような自然現象をうまく利用している貴腐ワインです。

【シャトー・ディケム】

貴腐ワインの誕生は偶然の産物でした。

サリュース侯爵の事情でシャトーでのブドウの収穫時期が遅れたことがあり、そのせいでブドウはしぼみ、使い物にならないと考えられました。
その年は仕方なくそのブドウを収穫し、樽に入れて保存していたそうです。
その樽は長年諦めからか放置されていましたがコンスタンティン公がたまたまテイスティングしたところ、大変気に入ったことから本格的な生産に乗り出したと言われています。

厳しい選別基準をクリアし、作られたワインは世界中のワイン愛好家を驚かせるような長命を誇っており、ロバート・パーカーによるとその飲み頃は10年から100年と言われています。
フォアグラと一緒に出されたり、デザートワイン、食前酒として振舞われています。